Debian 10 “Buster” が stable に

2019年7月6日,Debian 10 “Buster” が stable になりました。これにともない, “Stretch” は oldstable となります。

Buster ではそれほど目立つ変化はありませんが,AppArmor のデフォルトでの有効化,UEFI 対応強化など足回りが着実に強化されています。これまで testing として使ってきた感覚では,全体的に X 周りの安定性が高まっている印象もあります。

Stretch は2022年頃まで LTS 対象となる見込みです。Buster は2022年頃まで stable としてサポートされ,2024年頃まで LTS 対象となる見込みです。

Debian Testing で最新の Firefox を使う

 Firefox のバージョンも60を数えた2018年。Shiretoko (バージョン3.5)がもう遠い昔のことであるように思われます。アドオン類もメインストリームは Quantum 対応に移りつつあり,Quantum アップデートによる改革は成功したと言えるでしょう。
 ところで,Debian GNU/Linux が採用している Firefox ESR は Quantum アップデート以前のバージョン52で,これをメインで使ってきた私は半年間に渡って世界の流れ(?)から取り残されてきたことになります。
 もちろん Mozilla が配布しているパッケージを導入することもできるのですが,/opt 以下にインストールすることは想像もしたくない,かといって ~/ 以下にインストールするのもユーザ権限で改変できるわけで気持ち悪い……というわけでなんとなく ESR を使い続けてきました。しかし,unstable (Sid) にある firefox が Mozilla による正式リリース版ほぼそのものだということを(今更)知ったので,unstable のレポジトリから持ってきてみました。偉大なる APT は我らを導く!
 基本的にはDebian Mozilla team APT archive のページにある通りなのですが,ひとつ重大な問題があって,この通りにするとシステム全体が unstable にアップグレードされてしまいます。こわい。なので,これに加えて Default-Releasae も指定してやる必要があります。具体的には以下のような手順になります。

この記事は Debian Testing(執筆時点 Buster)における方法を紹介したものです。
Stable(執筆時点 Stretch)で以下の手順を実行すると、システムが破壊される可能性があります。
必ず,お使いのブランチが Testing であることを事前に確認してください。
  1. unstable のレポジトリを追加
    # vi /etc/apt/sources.list.d/10-unstable.list
    
    deb http://http.debian.net/debian unstable main
    

     

  2. Default-Release を設定
    # vi /etc/apt/apt.conf.d/10default-release
    
    APT::Default-Release "testing";
    

     

  3. firefox と firefox-l10n-ja をインストール
    # apt update
    # apt install -t unstable firefox firefox-l10n-ja
    

     
     以上で最新の Firefox がインストールされました。
     今の最新版は 60.0.1,検証期間が完了して Debian レポジトリの Firefox ESR が 60.2 に置き換わるまでにはしばらく時間がかかりますが,これでもう安心です。もっと早く気づくべきだった
     なお,Debian Mozilla team APT archive ページを見るに,このやり方を stable で実行することは推奨されないようです。実際に試してみると,なぜか libc6 等にまで依存関係があり巻き込んでアップデートしてしまうようで,たしかにこれはよくないです。stable ではおとなしく firefox-esr を使うか ~/ にバイナリを置くかするようにした方がよいかと思われます。
     
     
     
    以下は自分用メモ(読まずにコピペしないこと!)

    echo "deb http://http.debian.net/debian unstable main" > /etc/apt/sources.list.d/10-unstable.list; echo "APT::Default-Release "testing";" > /etc/apt/apt.conf.d/10default-release; apt update; apt install -t unstable firefox firefox-l10n-ja
    

Nextcloud プロバイダの無料プランを比較する

 自由ソフトウェアのオンラインストレージソリューション,Nextcloud をご存知でしょうか?
 簡単に言えば,Dropbox と Google Drive と Google Docs と Google Calendar をすべて合わせた上にマルチメディアやビデオチャットなどの機能も加えたものを自分のサーバで利用できるようにするという恐ろしい代物です。さらに,オンラインストレージ・コラボレーションツールとして定評があった ownCloud の創業者および主要開発者陣が独立してフォークした 1という経緯から,この多機能さにもかかわらずエンタープライズレベルの安定性があり,既に様々な組織で採用されているようです 2。Linux, Windows, macOS, Android, iOS, Windows Phone に対応した使いやすい公式クライアントが提供されており 3,大規模な組織から個人まであらゆるニーズに対応しています。

 Nextcloud ではユーザが自分自身でサーバを運用することが基本です。では,サーバ管理の手間なしに手軽に利用したい場合はどうすればよいのでしょうか? 開発元の Nextcloud GmbH ではホスティングサービスも提供していますが,法人向けプランのみです 4。もっとも,Nextcloud は自由ソフトウェアであるため,同一のソフトウェアでサービスを提供するサードパーティのプロバイダも存在します。プロバイダの一覧は Nextcloud 公式サイトで公開されており 5,こうしたプロバイダが提供するサービスには,安価な個人向けプランがあるのはもちろん,無料プランも存在しています。

 以下が,これらの無料プランを比較した表です。

プロバイダ名 DediSERVE Vault oCloud.de OwnDrive Pixel X e.K. Serverdiscounter Unixcorn Project Webo Hosting woelkli Cloud Storage Zaclys
運営主体 Dediserve Ltd. 個人(情報開示あり) 個人(情報開示あり) Pixel X e.K. 個人(情報開示あり) 不明 個人(情報開示あり) oriented.net GmbH Association la mère Zaclys
種別 非公開の株式会社(アイルランド) 個人事業(ドイツ) 個人事業(ノルウェー) 無限責任社員1名の会社(ドイツ) 個人事業(ドイツ) 不明(フランス?) 個人事業(スロベニア) 有限会社(スイス) 非営利団体(フランス)
運営主体設立年 2009 不明 不明 不明 不明 不明 不明 2014 1998
                   
容量(GB) 10GB 1GB 1GB 5GB 5GB 1GB 1GB 1GB 1GB
ファイルサイズ制限 不明 不明 不明 100MBまで 不明 不明 不明 不明 不明
                   
サーバ所在地 不明 ドイツ EU ドイツ ドイツ ドイツ 不明 スイス フランス
可用性(%) 99.99 非公表 非公表 非公表 99.5 非公表 非公表 非公表 非公表
定期バックアップ 不明 あり 不明 なし 不明 不明 不明 不明 なし
UPS 不明 あり 不明 不明 不明 不明 不明 不明 不明
サーバサイド暗号化 あり あり 不明 不明 不明 不明 不明 あり 不明
バージョン 不明 13.0.0 不明 不明 12.0.3 不明 不明 不明 不明(最新版)
サイトの言語 完全な英語対応 良好な英語対応 完全な英語対応 ほぼドイツ語のみ ドイツ語が多い ほぼフランス語のみ スロベニア語が多い 完全な英語対応 フランス語が多い

※ 2018年3月31日現在。Nextcloud 公式サイト掲載のプロバイダ一覧 https://nextcloud.com/providers/ に掲載されているサービスのみ。
※ 以下のサービスは除外しています。
Hostiso(情報不足), IndieHosters(情報不足), Open IT Store(情報不足), XT3(サーバ設定に問題), Quality Location UG(日本からのアクセスが遮断)

Comparison Chart of Nextcloud Providers’ Free (Gratis) Plans

Provider DediSERVE Vault oCloud.de OwnDrive Pixel X e.K. Serverdiscounter Unixcorn Project Webo Hosting woelkli Cloud Storage Zaclys
Organization Dediserve Ltd. Individual (disclosed) Individual (disclosed) Pixel X e.K. Individual (disclosed) N/A Individual (disclosed) oriented.net GmbH Association la mère Zaclys
Type Limited company (IE) Sole proprietorship (DE) Sole proprietorship (NO) “Eingetragener Kaufmann” (DE) Sole proprietorship (DE) N/A (FR?) Sole proprietorship (SI) Limited company (CH) Non-profit Organization (FR)
Established 2009 N/A N/A N/A N/A N/A N/A 2014 1998
                   
Server space (GB) 10GB 1GB 1GB 5GB 5GB 1GB 1GB 1GB 1GB
File size limitation N/A N/A N/A Up to 100MB N/A N/A N/A N/A N/A
                   
Server location N/A Germany EU Germany Germany Germany N/A Switzerland France
Availability (%) 99.99 N/A N/A N/A 99.5 N/A N/A N/A N/A
Backup N/A Yes N/A No N/A N/A N/A N/A No
UPS N/A Yes N/A N/A N/A N/A N/A N/A N/A
Server Side Encryption Yes Yes N/A N/A N/A N/A N/A Yes N/A
Server Version N/A 13.0.0 N/A N/A 12.0.3 N/A N/A N/A N/A (latest)
Web site language Perfect English support Good English support Perfect English support Mostly in German Many German pages Mostly in French Many Slovenian pages Perfect English support Many French pages

※ As of 31 Mar 2018. Within the scope of services listed on Nextcloud official website https://nextcloud.com/providers/
※ Services below have been excluded.
Hostiso (insufficient information), IndieHosters (insufficient information), Open IT Store (insufficient information), XT3 (problem with server configuration), Quality Location UG (access from Japan is blocked)

 表中にあるサーバサイド暗号化とはデータをサーバ上で暗号化して保管する仕組みで,経路を保護するエンドツーエンド暗号化(E2EE),データをローカルで暗号化したうえでアップロードするクライアントサイド暗号化とは区別されるべきものです。クライアントサイド暗号化と違い通信量は増加しませんが,原理上サーバ管理者による盗聴には無力です。
18/04/26追記:Nextcloud では各クライアント間の同期までを一連の通信とみなしているらしく,「end-to-end encryption」の語をクライアントサイド暗号化と同じ意味で使っているようです。 6
 大半のサービスは 1GB の提供となっており,10GB もの容量を提供している DediSERVE Vault が圧倒的な存在感を持っています。運営主体の DediServe 社はこのリスト中では最も大規模な事業者であり 7,アイルランド企業であることから完全に英語に対応している,障害情報等の報告も充実しているといった強みもあって,大容量であるだけでなく安心感も大きいです。欠点は Nextcloud サービスではサーバ所在地が選択できず限定もされていないことで,DediServe 社が利用しているサーバには米国,香港,シンガポール,インドネシアといった法的リスクが比較的高い国に位置するものが含まれている 8ことに加え,アジアおよび北米のサーバは香港 PCCW 社のデータセンタを利用しているものが少なくないようです 9。もっとも,(Dropbox や Google のような)一般的なサービスの基準でいえばまったく問題にされないレベルのリスクですし,Cryptomator 等を利用してクライアントサイド暗号化で利用することもできます。
 DediSERVE Vault 以外では Pixel X e.K. と Serverdiscounter が 5GB を提供していますが,どうも両方ともユーザ数が非常に少ないようですし 10,前者はそもそも有料プランとの差別化のためのファイルサイズ制限が厳しすぎます。
 結論としては,無料プランが前提であれば DediSERVE Vault を選べば間違いないと思われます。
 18/04/02追記:登録を試みたところ,自動検出により不正な登録であると判断され,1) クレジットカードの発行銀行および発行国を証明する書類,2) 写真付き身分証明書のスキャンまたは写真,3) 住所が記載された公共料金請求書のスキャンまたは写真 のうち2点以上をアップロードするよう求められました。もちろん全く論外であり,この条件ではおすすめできません。
18/04/26追記:再度試みてみたところ,今度はすんなりとプランを追加できました。どういう基準になっているのか謎ですが,弾かれた場合も日を置いてまた試してみるといいかもしれません。

Firefox で国際化ドメイン名を punycode で表示する ―― IDN 悪用フィッシングにとりあえず対策

 最近になって暗号通貨取引所に成りすましたフィッシングサイトが多く現れているようで,国際化ドメイン名(IDN)悪用の問題が話題になっているようです。
 この問題は国際化ドメイン名の登場当初から指摘されており,たとえば「apple.com」ではなく「аpple.com」(キリル文字で「アー・エル・エル・パーロチカ・イェー」)で登録するなどして,正規ウェブサイトのドメイン名と視覚上見分けがつかないドメイン名を取得し,フィッシングに悪用するという手法です。

窓の杜 – 【NEWS】Mozilla/Firefox/Operaなどに国際化ドメイン名の盲点をついたURL偽装の問題(2005/02/08)
肉眼では偽物と見抜けない国際化ドメイン悪用のURL偽装、Google Chromeなどで対策進む – 窓の杜(2017/04/21)

 国際化ドメイン名のコンセプト自体に起因している問題であるため抜本的な対策は困難で,十年以上にわたり対策が試みられ続けてきてなお完全な解決を見ていない問題ですが(なにしろ Unicode には十万以上の文字が収録されていますし,各レジストラのポリシも様々です) 1,国際化された表示を無効化し,国際化ドメイン名表示のための符合である punycode で表示するように設定することでさしあたりユーザ側で簡単にフィシング対策ができます。

about:config を開き,
network.IDN_show_punycode」の値を true にしてください。

これで,国際化ドメイン名が punycode で表示されるようになります。先述の「аpple.com」なら「xn--80ak6aa92e.com」と表示され,正規のサイトではないことが一目瞭然になります。
デメリットは国際化ドメイン名がわかりにくくなることですが,それで困る人がいるのかは不明。

Notes:

  1. レジストラが紛らわしいドメイン名の登録を拒否する,Firefox などクリックせずに EV-SSL の組織情報が表示されるブラウザで EV-SSL を利用する等が考えられますが,現実的には難しいでしょうね。

Piwik,Matomo になる

Piwik is now Matomo – Announcement – Analytics Platform – Matomo

 このサイトでも利用している自由ソフトウェアのアクセス解析ソフトウェア「Piwik」が,「Matomo」という名称へと変更されました。「Matomo」とは,そう,「まとも」に由来しています。
 Matomo という名称は「あらゆる言語で発音しやすい。(簡単に)覚えられる短さ。簡潔。そしてなにより… Matomo は日本語で honesty を意味し,これは私たちの重要な価値基準のひとつである透明性に通じるものです」 1とのことで,Piwik という名前が一部の言語では発音が困難であることを受けた選定であるようです。
 ただ,最大の理由は別にあるようです。「なぜ名前を Piwik のままにしないのですか?」という質問に答える形で,以下のような記述があります。「いくつか理由があり,そのうちの一つは,Piwik とは違って Matomo ではその名前を他の企業とは共有しないことを保証するためです。私たちはまた,Matomo ブランドを保護し,オープンソースコミュニティの名前としてずっと保ちたいと考えます」 2
 ここで言及されているのは「Piwik PRO」のことかと思われます。「Piwik PRO」についてはプロジェクト公式サイトの FAQ で説明されています 3。これはポーランドのある企業であり,Piwik を開発しているチーム及び InnoCraft 社とは資本的にも人的にも一切関係がないばかりか,プロジェクトへのコントリビューションも無いとのことですが,プロジェクト創設者から許諾された「Piwik PRO」という商標を所有しており,これを自らのビジネスで使用しているとのことです 4。この Piwik PRO がプロジェクト公式のものであると誤認されることを防ぐためにリブランディングの必要があったものと思われます。おそらくですが,許諾された当時は Piwik も「Piwik PRO」もずっと小さく,何年かでここまで成長するものとは思っていなかったために,現在の状況では不合理が生じていたのでしょう。
 ともかく Piwik 改め Matomo は本当におすすめのアクセス解析ソフトウェアです。日本語化もほぼ完全であり,簡単に使うことができます。この機会に是非試してみてください。

Get Matomo – Analytics Platform – Matomo

Source Han フォント(源ノ角ゴシック・源ノ明朝)のすゝめ

なぜ Source Han フォントを使うべきか

  • 利用に制限のない自由なライセンスのフォントなので,クロスプラットフォームで統一された表示を実現できる 1
  • Adobe と Google が自分たちのビジネスで使うために開発したフォントであり,トップクラスの商用フォントベンダである Adobe とイワタによって制作されているため高品質
  • CJK+欧文に対応しているので国際化にも最適

Source Han Sans/Source Han Serif と源ノ角ゴシック/源ノ明朝の違い

同一のフォントの英名と和名です 2 3 4。Source Han Sans の日本語名が「源ノ角ゴシック」,Source Han Serif の日本語名が「源ノ明朝」です。

なお,Source Han は Google が公開する Noto フォントにも取り入れられており,Noto フォントの CJK 部分も同じものになっています 5

Source Han フォントを導入するには

Step 1. ダウンロード

さまざまな形式が用意されていますが,「Language-specific OTFs」の日本語向けのものを選ぶとよいでしょう。

なお,日本語に関する部分だけを切り抜いてサブセットにした「Region-specific Subset OTFs」というものも用意されており,公式の説明ではどれを選べばよいかわからない場合の推奨とされていますが(古いシステムでも使える,ファイルサイズが小さいなどの理由による 6),アプリケーションからは元々の Source Han フォントとは別物として認識されてしまい,自由なライセンスによる環境や言語を超えたフォントの統一というアドバンテージは減じてしまいますので,「Language-specific OTFs」をおすすめします。

Sans(ゴシック体)では SourceHanSansJ.zip を,Serif(明朝体)では SourceHanSerifJ_EL-M.zip および SourceHanSerifJ_SB-H.zip の両方をダウンロードします。これらを解凍すると,Sans と Serif それぞれで基本となる7ウェイト(太さ)のフォントファイルが準備できます。

Step 2. インストール

各 OS のフォントインストール機能を利用してください。

Windows の場合,コントロールパネルから「デスクトップの設定>フォント」を選択し,表示されたパネルにフォントファイルをドラッグ&ドロップします

macOS の場合,「Font Book」アプリケーションを利用します

Linux の場合,~/.fonts/(ユーザのみ)または/usr/share/fonts/opentype/(システム全体)にフォントファイルをコピーします。最後に,fc-cache -v を実行してフォントキャッシュを更新してください。フォントビューアー gnome-font-viewer などのフォント管理アプリケーションを利用してインストールこともできます。ユーザのみに導入する場合,このスクリプトを使うことで一括ダウンロード&インストールすることもできます。

どのウェイトを使うべきか

Source Han フォントは Adobe によって開発されているだけあり,タイポグラフィでの利用を念頭に7種類ものウェイトが用意されています。しかし,オフィススイートなどで“普通の”フォントとして使うにはどのウェイトを使えばよいのでしょうか。

Medium, Normal, Regular と似たようなものが多く迷いますが,Regular が標準的なウェイトであり(欧文フォントでは regular の語が正体という意味で使われます),既存のフォントと並べても違和感のない表示になります。

もっとも近年は細身のフォントが文書作成の用途でも使われるようになってきていますので,お好みで Light を使うのもよいかと思います。

Source Han フォント以外のお勧めフォント

VL ゴシック

固定幅の「VL ゴシック」と可変幅の「VL Pゴシック」からなります。M+ フォントに欠けている文字をさざなみフォントで補ったうえで調整を加えたもので,Linux 界では長らく IPA ゴシックと並んで標準ゴシック体の地位を占めているフォントです。クリーンで読みやすいフォントであり,個人的には Source Han Sans より好みです。ぜひ Linux 以外の環境でも使ってみてほしいフォントです。

IPA Mona フォント

IPA フォントを元にしてフォント幅を「MS ゴシック」「MS Pゴシック」「MS UIゴシック」「MS 明朝」「MS P明朝」に近づける調整が加えられた「IPA Mona ゴシック」「IPA Mona Pゴシック」「IPA Mona UIゴシック」「IPA Mona 明朝」「IPA Mona P明朝」からなります。Windows 以外の環境で Windows 環境に極力近い表示結果を得たい場合に役に立つフォントです。

Debian + Xfce の外観を改善する設定ファイル

 デスクトップ環境として Xfce を選択して Debian をインストールしたときのテーマは本当にうんざりするほど古くさく,しかも使いにくいです。
 いやいや,Xfce の実力はこんなもんじゃあないんですってば。安定第一なんでしょうけど,このテーマで Xfce に初めて接した人が抱く第一印象が悪くなってしまうとしたら本当にもったいないことです。
 ということで,以下の2点を特徴とする,手っ取り早く導入できて見た目をそれなりに改善できる設定ファイルを公開してみます。

  • Debian Strech インストール直後の状態にて標準で入っているパッケージだけを使用し,バイナリのアートワーク等も含まない
  • GUI から再変更できる部分だけの変更

 Debian 9.1 “Stretch”(Xfce バージョン 4.12)のインストール直後の状態で導入できるようになっています。なお当然ながら,もし既にご自身で設定を変更されている場合は,必ず事前にバックアップを取ってください。
 ディレクトリ ~/.config/xfce4 (/home/ユーザ名/.config/xfce4) を削除し,この tar ball に含まれる「xfce4」以下を代わりにコピーした上で再起動してください。

設定が反映されない場合、元の設定ファイルを削除し再起動したうえで、グラフィカルログイン前にコンソール(Ctrl+Alt+F1)から設定ファイルをコピーしてください。

 

 初期状態。このデッドスペースは一体……


 上記設定ファイル導入後。パネルは透過させています。数十キロバイトの割にけっこう改善されていません? メニューもより多機能で洗練された Whisker Menu に変更してあります。
 テーマは「xfce4-flat」ですが「アドワイチャ(adwaita)」もお勧めです(特に LibreOffice のようにツールバーを複数持つアプリケーションの見た目がすっきりします)。
 外観以外にも一般的に有用と思われる設定変更をいくつかしてありますが,ひょっとしたら問題の原因となるかもしれません。特に,サスペンドの動作に問題がある場合は xfce4/xfconf/xfce-perchannel-xml/xfce4-power-manager.xml を削除してご利用ください。

19/05/05追記:導入方法について追記。なお9.9でも使えています。

Debian でも LibreOffice のアイコンセットをかっこよくする――Sifr アイコンセットの導入

 Debian で LibreOffice を使うとき,「新規作成」や「開く」といったボタンを表示するのに,標準では「Tango」アイコンセットが使われます。
 Tango も良いものなのですが,ボタンがたくさん並ぶオフィススイートではどうしても取っ散らかって古くさい印象になってしまいます。
 ところで,LibreOffice 4.2 から「Sifr」という単色のアイコンセットが導入されています。Debian では Jessie でも Stretch でもレポジトリに登録されており非常に簡単に利用できるので,今回はこのアイコンセットを導入します。

# apt-get update
# apt-get install libreoffice-style-sifr

1) LibreOffice を開いて「ツール>オプション」を選択。
2) 「LibreOffice>表示」を開く。
3)「アイコンのサイズとスタイル」で「自動(Tango)」となっているのを「Sifr」に変更。

 まだ全てのアイコンが揃っていないようでメニュー内などで一部 Tango も混じりますが,これだけでも雰囲気はかなりモダンな感じになります。
Sifr 導入後のスクリーンショット

 LibreOffice で真のオープン標準規格 ODF を使おう!

Debian with Raspberry Pi Desktop を試してみる(日本語化等の手順紹介)

 青い空,白い雲。絶好の Liunx 日和ですね。
 そこで今日は“ Debian with Raspberry Pi Desktop ”(以下 Debian with RPD)を試してみました。

 Debian with RPD は昨年末に「PIXEL」として公開された Debian GNU/Linux ベースのディストリビューションで,その後「Debian with Raspberry Pi Desktop」という名前に変更されたようです。このディストリビューションはRaspberry Pi の標準 OS である Raspbian 同様 Raspberry Pi Foundation の主導で開発されているものであり,Raspbian に近い見た目とバンドルアプリを備えていることが特徴です。公開時,このブログでも簡単に紹介しました。

 以前紹介した際は Live DVD としてしか利用できませんでしたが,現在では通常のデスクトップディストリビューションとして利用できるようになっています。今のところ RPD は LXDE のテーマに近い状態ですので,機能や安定性は既に実用的な水準に達しています。

Debian with RPD スクリーンショット
 GRUB2 は Debian テーマのままながら,起動時に Raspberry Pi Desktop オリジナルのスプラッシュスクリーンが表示されます。デスクトップが開いてしまえば見た目は完全に Raspbian ですね。なお,標準ではキーボードレイアウト選択以外のローカライズは何もありません。スクリーンショットはローカライズ後のものです(あくまでも Debian なので翻訳も揃っており,簡単にローカライズできます)。

Debian with RPD スクリーンショット
 ソフトウェアも Raspbian と同じものがプリインストールされて,設定も素の Debian ではなく Raspbian と同様になっています。

Debian with RPD スクリーンショット
 この特徴的なアイコン等,テーマとしては「PiX」という名前が付けられているようでした。

 以下,ローカライズ(日本語化等)の方法等について解説します。シェルスクリプトになっており,そのまま実行して動くはずですが,例外処理などはしていないので適宜修正してお使いください。

Raspi.sh(root として実行)

#/bin/sh

apt-get update
apt-get upgrade

# 1. 最低限あったほうがいいパッケージの導入
apt-get install compton tlp tlp-rdw
# apt-get install aptitude vim xscreensaver
echo @compton >> /etc/xdg/lxsession/LXDE-pi/autostart
systemctl enable tlp.service
systemctl enable tlp-sleep.service
systemctl disable systemd-rfkill.service
# compton はコンパクトなコンポジットマネージャで,グラフィックが極端に古くなければ(GMA 900 とか以降なら),これを起動時に開始することで CPU 負荷を軽減し体感スペックを上げることができます。
# 万が一トラブルが発生した場合は Ctrl+Alt+F1 でシェルからログインして自動起動を削除するか(/etc/xdg/lxsession/LXDE-pi/autostart を開いて"@compton"の記述を削除), compton をアンインストール(apt-get remove compton)してください。

# 2. IM 導入
# 軽快さ重視なら Anthy がオススメ。
#   apt-get install uim uim-anthy kasumi
apt-get install uim uim-mozc mozc-utils-gui

# 3. ロケール・タイムゾーン変更
# 手動で raspi-config でもできます。というかそっちが正攻法?
sed -i -e 's/# ja_JP.UTF-8 UTF-8/ja_JP.UTF-8 UTF-8/g' /etc/locale.gen
update-locale LANG=ja_JP.UTF-8
locale
timedatectl set-timezone Asia/Tokyo
timedatectl

# あとはユーザに戻って sourcehan-raspi.sh を実行すればローカライズは完成。

# 以下はお好みでどうぞ
# フォント導入
# apt-get install fonts-vlgothic fonts-ipafont-gothic fonts-ipafont-mincho
# 他のディストリビューションに通常標準搭載されている日本語フォントを入れておきたい場合は導入しておきましょう。なお,Droid と Unifont が標準で入っているため,特に入れなくても(表示品質はともかく)日本語表示に問題はありません。

# 標準アプリケーションの削除(Raspberry Pi 関係なく純然たる軽量 OS として利用する場合)
#   apt-get purge bluej geany greenfoot idle idle3 scratch scratch2 sense-emu-tools sonic-pi python3-thonny  claws-mail chromium
#   apt-get autoremove
#   mv /usr/share/raspi-ui-overrides/applications/raspi_resources.desktop /usr/share/raspi-ui-overrides/applications/raspi_resources.desktop.bck
#   mv /usr/share/raspi-ui-overrides/applications/magpi.desktop /usr/share/raspi-ui-overrides/applications/magpi.desktop.bck
#   mv /usr/share/raspi-ui-overrides/applications/python-games.desktop /usr/share/raspi-ui-overrides/applications/python-games.desktop.bck
# "Raspberry Pi Resources" と "The MagPi" はブラウザを起動するショートカット,"Python Games" は ./python_games/launcher.sh を起動するショートカットです。
# geany や chromium は残しておいてもいいかも。Claws Mail は軽量 MUA です。

# 自分がよく使うアプリケーションを入れていく
#   apt-get install firefox-esr firefox-esr-l10n-ja keepassx

# 用途によっていろいろ追加
#   apt-get install thunderbird thunderbird-l10n-ja simple-scan gimp filezilla vlc radiotray brasero easytag gparted ltris freeciv-client-gtk freeciv-server

# ある程度のグラフィック性能(目安:GMA X3100 以降)があるマシンならちょっとした 3D ゲームなんかも
#   apt-get install minetest megaglest extremetuxracer

# あとは普段使っている設定ファイルを ./ にコピーするといい感じに。
# お疲れさまでした。

sourcehan-raspi.sh(一般ユーザとして実行)

#/bin/sh

# Source Han フォントファミリを導入します。
# このスクリプトに実行権限を付与するか,"sh ./sourcehan-raspi.sh" して実行してください。
# フォントはこのスクリプトを実行したユーザのみに導入されます。

cd
if [ ! -d .fonts ]; then
    mkdir ./.fonts
fi
wget -t 3 -T 60 https://github.com/adobe-fonts/source-han-serif/raw/release/OTF/SourceHanSerifJ_EL-M.zip
unzip ./SourceHanSerifJ_EL-M.zip
mv SourceHanSerifJ_EL-M/SourceHanSerif-*.otf .fonts/
wget -t 3 -T 60 https://github.com/adobe-fonts/source-han-serif/raw/release/OTF/SourceHanSerifJ_SB-H.zip
unzip ./SourceHanSerifJ_SB-H.zip
mv SourceHanSerifJ_SB-H/SourceHanSerif-*.otf .fonts/
wget -t 3 -T 60 https://github.com/adobe-fonts/source-han-sans/raw/release/OTF/SourceHanSansJ.zip
unzip ./SourceHanSansJ.zip
mv SourceHanSansJ/SourceHanSans-*.otf .fonts/
ls ./.fonts
fc-cache -v -f .fonts
rm -rf SourceHan* __MACOSX

# Debian with RPD 用
sed -i -e 's/Roboto Light/源ノ角ゴシック Light/g' ~/.config/openbox/lxde-pi-rc.xml
sed -i -e 's/Roboto Light 12/源ノ角ゴシック Light 12' ~/.config/lxsession/LXDE-pi/desktop.conf
sed -i -e 's/Roboto Light 12/源ノ角ゴシック Light 12' ~/.config/gtk-3.0/gtk.css

参考:
Linux におけるラップトップマシン向け電力管理スイートの紹介(Pm-utils, Laptop-mode-tools, Powertop, TLP) – 怠惰の形而上学
Debian Jessie + Xfce で UIM ツールバーのアイコンの背景色がおかしいのを直すには – 怠惰の形而上学
Debian 上の GTK デスクトップ(Xfce, Gnome 等)で Qt アプリの外観を統合したい – 怠惰の形而上学

Debian with RPD,とても気に入りました。これからも使っていきたいです。

Linux におけるラップトップマシン向け電力管理スイートの紹介(Pm-utils, Laptop-mode-tools, Powertop, TLP)

 Linux をラップトップマシンにインストールすると Windows に比べてバッテリの持ちが悪い,ということが言われることがあります。
 ある意味では,これは事実でしょう。最大の理由は,電力管理の設定が最適化されていないことです。Windows ではメーカが機種ごとに作成した環境のリカバリディスク,あるいはドライバやユーティリティ類がありますが,大半の Linux ディストリビューションでは,32コアのワークステーションでもポケットサイズのモバイルマシンでも同じ DVD を使ってインストールします。したがって初期設定はまずはどんな環境でもそつなく動くようにしておく必要があり,マシンの特性に合わせた最適化は施されていないのです。
 幸い,Linux ではさまざまな省電力機能がサポートされていますし,それらを一括して管理できる見通しの良いツールもあります。数十分ほどの時間をかければメーカが用意した Windows 環境並み,そして(大抵は Linux 環境の方が負荷が軽いこともあり)それを超える電力管理をも実現できます。私のメインモバイルマシンである CF-SX1 は Windows より Debian の方がファンが静かな上に快適に動きますし,バッテリの持ちも良いです。
 この記事では Linux 環境の代表的な電力管理スイートを4つ簡単に紹介します。あくまでも私の個人的な意見であることに注意してください。公式サイトに加え Arch Linux Wiki (Arch Linux ユーザでなくとも極めて役立つ必見リソースです)の該当記事へのリンクも付けましたので参考にしてください。

Pm-utilsArch Linux Wiki 記事

 他のツールと組み合わせることで電源管理にも利用できるため Laptop-mode-tools 等と並べて名前が出ることも多いですが,pm-utils 自身はあくまでもコマンドラインから電源を操作するためのツールです。
 電源管理スイートとして使うためには様々な設定・スクリプト作成が必要で,しかも利用できる機能は限定的です。そのうえ systemd 移行により機能が被ってメリットが失われ,それどころか問題の原因となりうることもあって,今ではあまり人気がないようです。既に pm-utils を利用するスクリプトを多く書いて利用しているという方はともかく,今から導入するメリットは薄いように思います。

Laptop-mode-toolsArch Linux Wiki 記事

 長らくラップトップ用電源管理スイートとしてスタンダードの地位を占めてきたツールです。名称は,カーネルに組み込まれている機能である「Laptop mode」を利用する(しやすくする)ためのツールという意味で,ラップトップマシンのための電源管理スイートの草分け的存在と言えるでしょう。私が最初に導入したツールがこれで,4年ほど前まで使用していました。
 現在でも使われていますが,いかんせん古いソフトという印象で,どうも設定が煩雑でわかりにくいです。よいソフトではあるのですが,他と比較すると,今から導入するメリットは薄いかもしれません。
 もっとも現在も開発は続いていますし,最近は github のコミットも活発になっているようです。これから大きく変わることもありえます。今後の発展に期待です。

PowertopArch Linux Wiki 記事

 Intel 謹製の電源管理スイート……というより,電源管理診断ツールといったものです。公式ウェブサイトでも「a Linux tool to diagnose issues with power consumption and power management」とされています。電源管理機能はあくまでも診断の便宜のためといったスタンスで,再起動すると設定は失われてしまいます。設定を永続化させるためには起動時に自動で powertop に命令するスクリプトを組むなどする必要がありますが,これが少々手間です。また,あくまでも診断のための機能のため,バッテリ駆動時と AC 駆動時でプロファイルを分けるといったこともできず(やるならこれも自前でスクリプトを組んでステートが変わるたびいちいち命令させる必要がある),あまり細かいことをするとデバッグの手間が出てきます。手抜きの荒業としては rc.local に(今なら systemd のサービスを)書いて /usr/sbin/powertop --auto-tune を起動時に自動実行させるというのもありますが(TLP 導入に先立って一時期そうしていました),細かい設定ができないことによる副作用があるうえ,マシンによっては大きな問題が発生することもありえます。
 一方で設定のチューニングには非常に使いやすいツールです。下記の TLP と併用している人が多いようです。概算の消費電力が表示されるのもなんだか楽しいです。

TLPArch Linux Wiki 記事

 結論です。今から入れるならコレ! 機能と手軽さの両面で他の3つを上回っています。
 公式サイトには「TLP comes with a default configuration already optimized for battery life, so you may just install and forget it」と頼もしいことが書かれています(もちろん,実際にはマシンや利用スタイルに合わせた調整もしたほうがより良いのですが)。Powertop と違いシステムの一部を構成する電源管理スイートとして設計されており,解説付きの設定ファイルを少しいじるだけで電源管理を最適化することができます。また,バッテリ駆動時と AC アダプタ利用時での別のプロファイルの利用に標準対応しています。systemd との親和性も高いです。
 現状では主として linrunner 氏という匿名の個人のみによって開発されていて開発の継続性や方向性がやや不透明なのが短所といえば短所ですが(cf. xscreensaver),既に6年以上開発が続いており,実績は充分です。
 Debian の場合,TLP はターミナルから以下を実行することで導入され,機能を開始します(詳しくは Arch Linux Wiki を参照)。

$ su
# aptitude update
# aptitude install tlp tlp-rdw
# systemctl enable tlp.service
# systemctl enable tlp-sleep.service
# systemctl disable systemd-rfkill.service
# tlp start