これいいかも? OpenWrt 搭載の無線 LAN ルータ「GL-MT300N-V2」

更新

GL.iNET の技適対応ルータ機能比較表

GL-MT300N-V2 / Mango GL-AR750 / Creta GL-AR750S-Ext / Slate GL-AR300M / Shadow GL-AR300M-Ext /Shadow Microuter-N300 GL-B1300 / Convexa-B GL-MV1000 / Brume
SoC MT7628N @580Mhz QCA9531 @650MHz QCA9563 @775MHz QCA9531 @650MHz QCA9531 @650MHz MT7628N @580Mhz IPQ4028 Cortex-A7*4コア @717MHz 88F3720 Cortex-A53*2コア @1.0Ghz
RAM 128MB 128MB 128MB 128MB 128MB 128MB DDR3L 256MB DDR4 1GB
NOR Flash 16MB 16MB 16MB 16MB 16MB 16MB 32MB 16MB
NAND Flash 128MB 128MB 128MB 128MB 8GB (eMMC)
2.4GHz Wifi
5GHz Wifi
Protocols b/g/n a/b/g/n/ac a/b/g/n/ac b/g/n b/g/n b/g/n a/b/g/n/ac/Wifi SON
USB 2.0*1 2.0*1 2.0*1 2.0*1 2.0*1 3.0*1 2.0*1
microSD
GPIO ? ? ?
WAN/LAN 100M*1 100M*3 GbE*3 100M*2 100M*2 100M*1 GbE*3
外部アンテナ
電源規格 microUSB microUSB MicroUSB microUSB microUSB microUSB 12V USB type-C
最大消費電力 2.75W 6W 6W 2W 2W 2.75W 7W 不明
AC アダプタ付属

GL-MT300N-V2 (Mango)

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興味深いネットワーク機器を見つけたので紹介します。UbiquitiMikroTik の製品と同様にカスタマイズ性の高い Linux ベースのルータの部類に属するものですが,完全に家庭用として設計されている代わりにベンダ独自でなく OpenWrt ベースのファームウェアが搭載されており,無線 LAN に対応し,しかもこの手のデバイスとしてはかなり安価……という特長があります。

OpenWrt とは

まずは OpenWrt について簡単に説明しましょう。OpenWrt は家庭用無線ブロードバンドルータ向けの代替ファームウェアのひとつであり,ソフトウェアレポジトリから手軽に拡張可能な Linux ディストリビューションの一種でもあります。

以前、Fon の安価な無線 LAN ルータに DD-Wrt を導入することが流行ったことがありますが,DD-Wrt も OpenWrt から派生したものです 1

OpenWrt では,ベンダ純正ファームウェアでは差別化のためやサポートコスト削減のために除外されているような高度な機能を利用できるほか,Linux の知識を活かした柔軟な運用が可能というメリットがあります。

しかし対応デバイスは限られているほか,電波法の問題があり,無線 LAN ルータで利用できる局面は限られているというのが現実です。

混乱を招きそうな関連用語にも触れておきます。

LuCI は OpenWrt のグラフィカルなウェブフロントエンドです。もともと OpenWrt にはグラフィカルなフロントエンドが標準搭載されておらず,設定などは全てコマンドで行う必要がありました。

現在では公式イメージにも LuCI が標準搭載されるようになりましたので,特に意識する必要はありません。

LEDE は過去に存在した OpenWrt フォーク(分岐)のプロジェクトであり,より初心者向けを志向していたため人気がありました。

現在では LEDE の方針を OpenWrt が採用する形で再統合されていますので,これも意識する必要がありません。

GL-MT300N-V2 (Mango) とは


さて,そこで GL-MT300N-V2 です。GL-MT300N-V2 は香港 GL.iNET (GL Technologies & Microuter Technologies 社)の小型ルータで,OpenWrt ベースのファームウェアが標準搭載されています。

MIPS 24KEc 580MHz (MT7628N),128MB DDR2,16MB フラッシュメモリというスペックで,CPU には AES-128/256 のハードウェア支援に対応した拡張機能があるので,OpenVPN も快適に利用できそうです。

しかもルータのくせに USB ポートに加え GPIO ピンまであり,拡張性も申し分ありません。

無線 LAN は 11n 300Mbps までの対応,GbE 非対応,5Ghz 帯非対応,アンテナ内蔵で電波の飛びも悪そうと,コンピュータとしてのポテンシャルの高さからするとかなり割り切った仕様ですが,一人暮らしならこれで充分ですし,小型で超低消費電力(2.75W未満) 2というメリットもあります。 3

ルータ親機としての利用のみならず,中継器/コンバータとしての利用にも対応しているため,特にハックせずとも利用の幅はかなり広いでしょう。

……いや,ここまでならよくある開発ボードと言うこともできるでしょう。GL-MT300N-V2 を真にユニークにしているのは以下の点です。すなわち,ベンダ自ら中国価格で Amazon.co.jp で販売しており(しかも Amazon 発送),さらに驚くべきことに,技適にもしっかり対応しているのです。

私が知る限り,OpenWrt が標準搭載されて技適に対応した無線 LAN ルータは他に選択肢がありませんし,ベンダ独自のディストリビューションを採用したものでも,手軽に買える値段のものはありません。

カスタマイズ可能なルータを構築する用途に Raspberry Pi のようなシングルボードコンピュータを使うのはオーバースペックであり,発熱の問題に悩まされることにもなりましたが,超低消費電力な CPU を搭載したこの機種であればまさにピッタリなのではないかと思います(もっともこのマシンがしっかり冷やした Raspberry Pi と同程度に安定するのかはまだわかりませんが……)。

個人の勉強用はもちろん,大学や専門学校でのネットワーク技術の教材としても使えるのではないかと思います。

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今のところいじろうと思って放置しているデバイスが多い(La Frite ももうすぐ発送みたいですし……)のでモチベーションがありませんが,この値段はお値打ちですし,無線 LAN が使えるのはユニークです。ホビー感たっぷりの「マンゴー色」の筐体もブツヨクをそそります。いずれ購入したら紹介したいと思います。

GL-AR750 (Creta) / GL-AR750S-Ext (Slate)

新機種として、650MHzの Qualcomm QCA9531 を搭載した GL-AR750 と 775MHz の Qualcomm QCA9563 と外部アンテナを搭載した GL-AR750S-Ext が国内発売されたようです。

共通の仕様として、5GHz 帯・11ac への対応のほか、16MB の NOR に加えて 128MB の NAND フラッシュメモリが追加、128GB までの microSD への対応など活用の幅が広がっています。

5GHz 帯への対応はかなり大きな違いだと言えます。都市部のホテルでは電波が混み合って 2.4GHz 帯は使い物にならない場合もありますが,5GHz 帯であればほぼ確実に通信できます。シリーズ最新機種であることもあり,ベンダが推奨している VPN ルータなどとしての実用目的であれば,とりあえずこれを買っておけば間違いありません。

一方で,あれこれいじって遊ぶことが目的であれば,下位の GL-AR750 でも価格・消費電力(最大6W)ともに倍以上になっており、なかなか悩ましいところです。たとえば,ウェブカメラをつないでモバイルバッテリで駆動して Wifi で定期的にデータを送る……といった使い方は,ちょっと厳しいかもしれません。単なるセンサ等のネットワークインタフェースにしたり,イーサネットコンバータとして使ったりするのもちょっともったいないです。

GL-AR300M / GL-AR300M-Ext (Shadow)

「GL-AR300M-Ext」および「GL-AR300M」という機種も販売されています。これらは MT300N-V2 より古い機種ですが,記事作成時点で技適に対応していなかったため紹介していませんでした。しかしながら,今年6月4日にひっそりと技適に対応(総務省データベースへの掲載はこちらしていたようであり,現在もファームウェアアップデートが提供されています。

2.4GHz 帯のみの対応ですが,どちらも SoC が現行機種の GL-AR750 と同じ Qualcomm QCA9531 であり,128MB の NAND 領域もあるなど,GL-AR750 にかなり近い基本仕様になっています。今もディスコン扱いにはなっておらず,わざわざ技適対応させたことも合わせると,今後もしばらくはアップデートが期待できるかもしれません。

しかも,旧機種のためか大幅値引きのクーポンが出ることがあり,MT300N-V2 とあまり変わらない価格になることがあります(特に外部アンテナ付きの上位モデルだった GL-AR300M-Ext が割安)。Realtek の MIPS SoC は正直なところ安かろう……で OpenWrt でへんてこな不具合が発生する場合もあったりしますが,Qualcomm の SoC といえばもっと”高級品”であり,メインストリートの家庭用無線 LAN ルータで一般的に採用されているベンダでもあるので,自分でパッケージをビルドする場合などにもトラブルが少ないことが期待できます。

公称消費電力は最大 2W となっています。これは少し低すぎる数字であるように思いますが,GL-MT300N-V2 と同等程度には低消費電力なのは間違いありません。

5GHz 帯にも対応した GL-AR750 との価格差次第ですが,こちらも検討に値するかと思います。

Microuter-N300

Microuter-N300 という機種が発売されたようです。技適に対応しており,SoC や RAM 等スペックは GL-MT300N-V2 とほとんど同じで,2.4GHz 帯にしか対応していないのも同じですが,USB ポートが削除されています。また,スペック表を見る限りでは,GPIO ピンも削除されているように見受けられます。

要するにGL-MT300N-V2 のコストダウン版であり,少し安い値段で売られています。”Microuter” のコードネームは日本未発売の「GL-USB150」が初出であり,これの後継機種かと思われますが,GL-MT300N-V2 の後継機種扱いだとしたらやだな。中身はほぼ同じなので GL-MT300N-V2 についての情報がそのまま使えるのはよいところでしょうか。

USB ポートがないのでは OpenWrt の無限の拡張性を活かせず,コンピュータとしての魅力は半減どころではありません。特に,GL.iNET の小型ルータは Flash ROM が 16MB しかないため,これを拡張できないのはかなり痛いです。消費電力も同じであるため,「僅かに安い」以外の魅力は一切ありません。

Microuter-N300 はおすすめしません。GL-MT300N-V2 を買いましょう。

とはいえ,単に「出先で VPN をまともに使える小型ルータを安価に欲しい」というだけなら(実のところ,Amazon.co.jp のレビューを見る限りそういう需要のほうが多いようです),16MB の Flash ROM でも特に問題ありません。外部ドライブの活用にせよソフトの追加にせよ一定の知識が必要なため,もとよりそのようなことをする気がない方には,実用上の違いはないかもしれません。そのような場合に限れば,価格差によっては検討の価値があるでしょう。もっとも,そのようなユースケースにおいては,もう少し出して 5GHz 帯にも対応したモデルを購入したほうが安全かと思います。

GL-B1300 (Convexa-B)

GL-B1300 (Convexa-B) も最近発売された機種です。だいぶ追記が長くなってきたため機能比較表を作ったので詳細をそちらを見ていただきたいですが,クアッドコアの ARM CPU の採用,RAM の DDR3L 256MB への増強と,スペックが大幅に底上げされています。しかし一番面白いのは,Qualcomm のメッシュネットワーク規格「Wifi SON」に対応していること。これについては OpenWrt で実用的に使えるかはかなり謎ですが,なかなか楽しそうです。

もっとも,コンパクトとはいえ持ち運びに便利な大きさでもなく,電源も 12V となっていますので,モバイル向きではないでしょう。AC アダプタは付属しているようであるものの,他機種のレビューでは PSE マークのないアダプタだったというレビューもあり,常用前提のこの機種では別途購入したほうが安心かもしれません。Amazon で探すよりも,秋月電子あたりで買ったほうが(送料を合わせても)安くて品質も高いものが手に入ります。

なお,日本未発売の姉妹機に Convexa-S というのもあり,そちらは Zigbee と Bluetooth に対応しています。

USB が 3.0 なのはこの機種だけであり(ただし SoC が力不足なので実効速度は不明),ストレージを接続していろいろ使えるかもしれません。

GL-MV1000 (Brume)

GL-MV1000 (Brume)無線 LAN 非対応で,要するにネットワークに最適化されたシングルボードコンピュータ(SBC)をガワに詰めたものです。デュアルコアの Cortex-A53 1GHz に DDR4 1GB の RAM と,最近の SBC と比べれば低いスペックとはいえ,割といろいろできる感じです。SoC 内蔵の(USB 接続でない)GbE を搭載しているのは魅力的ですが,古い SoC で USB が 2.0 なのは残念な感じ。SATA があれば…… 4 無線 LAN がないので USB ポートに AP モード対応の Wifi ドングルを挿したくなるところですが,規格上は 500mA でよい 2.0 なのでバスパワーで安定するかも不明です。期待できないかも。

Ubuntu を入れることもできるらしいながら,アップデートに追従させてマトモに使おうとするとおそろしい茨の道になりそうなので,OpenWrt で使うかローカルのみで Ubuntu で使うかの二択になりそうです。まあ,これくらいのスペックを要するような用途については,Raspberry Pi 3 Model A+ あたりを使ったほうが血圧に優しいかと思います。

AC アダプタは付属していますが,別途購入したほうがよさそうなのは GL-B1300 (Convexa-B) と同じです。2000円程度の追加出費は見ておいたほうがよいかもしれません。

ただ,コンパクトで軽量(105g)な割にパワフルでネットワークインタフェースも充実しているので,既製品の VPN ルータをお探しの場合で無線 LAN が必要でない場合はアリかもしれません。GL.iNET 公称値では,AR750 の OpenVPN スループットが最大 15Mbps であるのに対し,GL-MV1000 (Brume) では 97Mbps となっています。

どうでもいい余談ですが,GL.iNET では広くレビュー用サンプルなどの配布をしているようであるところ,私は GL.iNET から一切の利益供与を受けていません。OpenWrt を,つまりはエンドユーザが自分でカスタマイズできる自由な Linux 環境を広く一般に普及させたいという宗教的技術的動機のみに基づいて更新しています。

ただし,Amazon への広告リンクに基づく(微々たる)紹介料は発生しています。このページから月に10台くらい売れているらしい。訪問者の役に立っている……のか?

19/06/03 GL-AR750 と GL-AR750S-Ext について追記
19/10/05 少し修正
19/12/16 GL-AR300M と GL-AR300M-Ext について追記
20/01/17 Microuter-N300 について追記
20/01/18 GL-B1300 と GL-MV1000 について追記,機能比較表も作ってみた,どうでもいい余談も

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Notes:

  1. なお,DD-Wrt は、カスタマイズ可能な Linux ディストリビューションとしてよりも簡単に使える代替ファームウェアとしての側面にフォーカスしているという方向性の違いがあるようです。
  2. 同じくらいの CPU と RAM を搭載した一般的なルータの消費電力は10〜20W
  3. もちろん,できればハイパワーモデルや業務用モデルの選択肢も欲しいところですけどね。
  4. SoC には SATA 3.0 コントローラがあるものの,引き出されていないっぽい。

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