「消毒液」を知って,安価に手に入れて効果的に使おう

COVID-19 の国内での感染拡大にともない,マスクの買い占め・転売に続いて,消毒液でも買い占め・転売による品切れが見られるようになりました。本稿では,推奨されている消毒液の種類と使い方について知って,「品薄」に踊らされずに身を守るために役立つ情報を共有したいと思います。

なお,筆者は医療従事者でも医学研究者でもない素人です。(各機関が公開している情報に基づいた)個人の見解であることにご注意ください。

そもそもコロナウイルスとは何か

「コロナウイルス」と言うと,なにやら聞きなれない名前で,なにか恐ろしいものであるように感じます。

しかし,実のところ,コロナウイルスは風邪の原因となるウイルスとしてごく一般的な種類のものです。

もちろん,これまでの常識が通用しない突然変異が生じたものが「新型」と呼ばれるわけですから,これだけをもって安易に「ただの風邪みたいなもの」と考えることはできません。ただ,エイリアンのように得体の知れない存在ではないということはわかるかと思います。

そして重要なのは,コロナウイルスは「エンベロープ」を持つタイプのウイルスであることです。

エンベロープとは,ちょうど細菌の細胞膜のようにウイルス体をすっぽり覆っている膜のことであり,脂質を多く含むため,界面活性剤やアルコール(エタノール)で壊すことができます。エンベロープが壊れると,ウイルスは機能を失います。

つまり,ノロウイルスのようなエンベロープを持たないウイルスとは違って,アルコールや界面活性剤によっても消毒することができるのです。

これはウイルスの基本的な構造によるものなので,抗生物質のようにすぐ耐性菌が生じるような心配はありません。じっさい,同じく新型コロナウイルスの流行であった SARS・MERS でも一般的な界面活性剤が有効であったことが知られており,家庭における SARS 対策の消毒液として「ぬるま湯で溶かした台所用合成洗剤」の使用も提案されています(もっとも,これがそのまま今回のウイルスにも使えるとは限らないことには注意が必要です)。

各機関の推奨する消毒液

厚生労働省

厚生労働省では,一般向けの情報として,以下を推奨しています。

  • 石鹸による手洗い
  • アルコール消毒液の使用

アルコール濃度についての言及はありませんが,参考として挙げられている社会福祉施設向けマニュアルでは「70%」,保育園向けガイドラインでは「70~80%」という数字があります。

また,医療機関・検査機関向けの情報として,以下を推奨しています。

  • 石鹸による手洗い
  • 手などの皮膚の消毒について,消毒用アルコール(70%)
  • 物の表面の消毒について,次亜塩素酸ナトリウム(0.1%)

世界保健機関(WHO)

WHO では,一般向けの情報として,以下を推奨しています。

  • 石鹸による手洗い
  • アルコール消毒液の使用

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)

米国 CDC では,一般向けの情報として,以下を推奨しています。

  • 20秒以上の石鹸による手洗い
  • すぐに石鹸による手洗いができない場合について,60% 以上のアルコール消毒液の使用

新型コロナウイルスに有効とされる消毒液

アルコール(手指の消毒)

アルコール消毒液は手指しゅし消毒用として肌に直接使用できるため,石鹸での手洗いをすぐにできない場合の緩和策として役立ちます。手洗い後の併用にも効果があるとされます(CDC)。

アルコール消毒液で最も一般的な材料はエタノールであり,薬局で並んでいる製品には,99.5% もの純度のエタノールである「無水エタノール」をはじめ,95%を超える「エタノール」,消毒用に便利な 80% 前後に調整された「消毒用エタノール」といったバリエーションがあります。

一般に「消毒用」が最もコストパフォーマンスが高いですが,売り切れの場合は無水エタノールなどを水で薄めて使っても問題ありません。

エタノールと水だけだと酒税法の対象となるため,飲用不適となるようイソプロパノールを加えた「IP」タイプもあり,同じ性能でより安価に手に入れることができます。

このほか,扱いやすいようにジェル状に加工されたものもあります。

なお,「燃料用アルコール」は人体への害が大きいメタノールが主成分ですので,消毒用途には適しません。

濃度について

おおむね 70% 以上が推奨されています。

市販のアルコール消毒液は 70%~80% 程度の濃度です。ただし,スプレータイプなどでは濃度不明なものが多いです。アルコール以外の成分も謳っている製品は避けたほうが無難かもしれません。

消毒液のアルコール濃度について,「70% 前後が最も効果が高い」という話を聞いたことがある人は多いと思いますが,これは細菌についての話であり,しかも古い説であるそうです。

ウイルスの場合は濃度は高ければ高いほどよく,細菌の場合は 60~95% の範囲で効果を発揮するとのことです。もっとも,濃度が高すぎると蒸発が早すぎて塗り拡げることが難しいので,日常的な使用では,手指消毒用として一般的な 70% 程度が最も効果的なのではないかと考えられます。

入手について

既に買い占め・転売が進んでおり,ネットでの在庫は払底しています。

しかし,薬局などではまだ在庫がある場合もあると思われるほか,アルコール飲料としての入手も可能です(消毒液としてはかなり割高ながら,おいしく飲めるのでお得?)。

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次亜塩素酸ナトリウム(器具の消毒)

次亜塩素酸ナトリウムは強力な消毒液で,ノロウイルスなどにも効果があることが知られています。

アルコールより長時間残存してしっかり消毒してくれるため,ドアノブなどにぴったりです。非常に安価であるという強みもあります。

ただし,人体に触れると肌荒れの原因になり,金属に触れると錆びの原因となるため,使用には注意が必要です。

また,希釈することを前提とした濃度で流通しており,製品によって濃度はかなりまちまちであるため,消毒液として利用する際には濃度によく気を付ける必要があります。

濃度について

0.1% の濃度が推奨されています。

これはかなり薄く感じるものでありますが,心配だからと不用意に高い濃度で使用すると,呼吸器へのダメージ等却って問題のほうが大きくなるでしょうから,くれぐれも用法用量を守りましょう。

入手について

現在のところ潤沢に出回っているようです。消毒液原液として薬局やネット通販で手に入ります。

漂白剤でも次亜塩素酸ナトリウムを主体とするものが多いですが,安全性と安定した効果のために純粋なものを使用するべきでしょう。

石鹸での手洗いが一番大切!

ここまでアルコールと次亜塩素酸ナトリウムの消毒液について紹介しましたが,実のところ,どの機関でも一番に推奨しているのは「水と石鹸での手洗い」です。なお,ここでいう「石鹸」(soap)には,固形石鹸だけでなく,界面活性剤全般が含まれます。

先述の通り,単に機械的に洗い流すことができるのみならず,石鹸の界面活性によりウイルスを破壊することができるのです。

CDC では20秒以上の手洗いを推奨しています。まだまだ水が冷たい季節ですが,新型コロナウイルス,風邪,インフルエンザ等に感染すれば熱と痛みに苦しむことを考えれば,なんともないことです。

(「ミューズ ノータッチ」は電池式でどこでもセンサ式ソープディスペンサを設置でき,値段も安いのでおすすめ。ただ効果は時間をかけざるをえない泡ではないタイプのプッシュボトル式でしっかり洗ったほうが高そう?)

補論:効果がないもの

「クレベリン(大幸薬品)」等,二酸化塩素ガスによる空間の消毒を謳った商品には効果がないことが繰り返し指摘されており,呼吸器のデリケートさを考えれば,「無いよりはまし」どころか「無いほうがまし」なものです。

プラズマクラスター(シャープ)・ナノイー(パナソニック)等はマイナスイオン商法の焼き直しで,実際にはオゾンの消臭効果を利用したものです(ただし,ベンダ側はあくまで「プラズマクラスター」なり「ナノイー」なりを主張しています)。多少の消臭効果はありますが,部屋の空気に含まれるウイルスを失活させるような効果は期待できません。

使い捨てマスク・ガーゼマスクの予防効果は限定的であることが知られており,たとえば WHO では,前掲の一般向け情報ページにおいて,感染が疑われる者を介護しているような場合を除いてマスク着用は不要としています。

しかし,COVID-19 も含めコロナウイルスの空気感染は通常起こらないとされ,せきなどの飛沫によるものと考えられるため,予防目的のマスク着用にも全く意味がないわけではないと思われます。先の WHO ベストプラクティスでは「他の人から 1m 以上離れる」ことも推奨していますが,日本の首都圏,特に電車に乗る場合では,ほとんど不可能でしょう。そういう意味では,着用の効果も完全には否定できません。

ただ,通常の手洗い・うがいを丁寧にするほうが常用であることは明らかであり,少ない在庫を奪い合うような必要はないものと思われます。効果の薄い予防のためにマスクを買いだめして症状が出ている人の手に入らないのは本末転倒な話ですし,抵抗力が低下しているなどで本当に必要としている人のもとに届かないことで,重大な結果を招くおそれもあります。

いずれにせよ,実際には効果の乏しい「対策」によって誤った安心感を得てしまうことは,手洗いをはじめとした実際に効果のある対策を怠ることにもつながりかねず,たとえそれ自体は毒にも薬にもならないものであったとしても,危険です。

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