Linux におけるラップトップマシン向け電力管理スイートの紹介(Pm-utils, Laptop-mode-tools, Powertop, TLP)

 Linux をラップトップマシンにインストールすると Windows に比べてバッテリの持ちが悪い,ということが言われることがあります。
 これは事実でしょう。最大の理由は,電力管理の設定が最適化されていないことです。Windows ではメーカが機種ごとに作成した環境のリカバリディスク,あるいはドライバやユーティリティ類がありますが,大半の Linux ディストリビューションでは,32コアのワークステーションでもポケットサイズのモバイルマシンでも同じ DVD を使ってインストールします。したがって初期設定はまずはどんな環境でもそつなく動くようにしておく必要があり,マシンの特性に合わせた最適化は施されていないのです。
 幸い,Linux ではさまざまな省電力機能がサポートされていますし,それらを一括して管理できる見通しの良いツールもあります。数十分ほどの時間をかければメーカが用意した Windows 環境並み,そして(大抵は Linux 環境の方が負荷が軽いこともあり)それを超える電力管理をも実現できます。私のメインモバイルマシンである CF-SX1 は Windows より Debian の方がファンが静かな上に快適に動きますし,バッテリの持ちも良いです。
 この記事では Linux 環境の代表的な電力管理スイートを4つ簡単に紹介します。あくまでも私の個人的な意見であることに注意してください。公式サイトに加え Arch Linux Wiki (Arch Linux ユーザでなくとも極めて役立つ必見リソースです)の該当記事へのリンクも付けましたので参考にしてください。

Pm-utilsArch Linux Wiki 記事
 他のツールと組み合わせることで電源管理にも利用できるため Laptop-mode-tools 等と並べて名前が出ることも多いですが,pm-utils 自身はあくまでもコマンドラインから電源を操作するためのツールです。
 電源管理スイートとして使うためには様々な設定・スクリプト作成が必要で,しかも利用できる機能は限定的です。そのうえ systemd 移行により機能が被ってメリットが失われ,それどころか問題の原因となりうることもあって,今ではあまり人気がないようです。既に pm-utils を利用するスクリプトを多く書いて利用しているという方はともかく,今から導入するメリットは薄いように思います。

Laptop-mode-toolsArch Linux Wiki 記事
 長らくラップトップ用電源管理スイートとしてスタンダードの地位を占めてきたツールです。名称は,カーネルに組み込まれている機能である「Laptop mode」を利用する(しやすくする)ためのツールという意味で,ラップトップマシンのための電源管理スイートの草分け的存在と言えるでしょう。私が最初に導入したツールがこれで,4年ほど前まで使用していました。
 現在でも使われていますが,いかんせん古いソフトという印象で,どうも設定が煩雑でわかりにくいです。よいソフトではあるのですが,他と比較すると,今から導入するメリットは薄いかもしれません。
 もっとも現在も開発は続いていますし,最近は github のコミットも活発になっているようです。これから大きく変わることもありえます。今後の発展に期待です。

PowertopArch Linux Wiki 記事
 Intel 謹製の電源管理スイート……というより,電源管理診断ツールといったものです。公式ウェブサイトでも「a Linux tool to diagnose issues with power consumption and power management」とされています。電源管理機能はあくまでも診断の便宜のためといったスタンスで,再起動すると設定は失われてしまいます。設定を永続化させるためには起動時に自動で powertop に命令するスクリプトを組むなどする必要がありますが,これが少々手間です。また,あくまでも診断のための機能のため,バッテリ駆動時と AC 駆動時でプロファイルを分けるといったこともできず(やるならこれも自前でスクリプトを組んでステートが変わるたびいちいち命令させる必要がある),あまり細かいことをするとデバッグの手間が出てきます。手抜きの荒業としては rc.local に(今なら systemd のサービスを)書いて /usr/sbin/powertop --auto-tune を起動時に自動実行させるというのもありますが(TLP 導入に先立って一時期そうしていました),細かい設定ができないことによる副作用があるうえ,マシンによっては大きな問題が発生することもありえます。
 一方で設定のチューニングには非常に使いやすいツールです。下記の TLP と併用している人が多いようです。概算の消費電力が表示されるのもなんだか楽しいです。

TLPArch Linux Wiki 記事
 結論です。今から入れるならコレ! 機能と手軽さの両面で他の3つを上回っています。
 公式サイトには「TLP comes with a default configuration already optimized for battery life, so you may just install and forget it」と頼もしいことが書かれています(もちろん,実際にはマシンや利用スタイルに合わせた調整もしたほうがより良いのですが)。Powertop と違いシステムの一部を構成する電源管理スイートとして設計されており,解説付きの設定ファイルを少しいじるだけで電源管理を最適化することができます。また,バッテリ駆動時と AC アダプタ利用時での別のプロファイルの利用に標準対応しています。systemd との親和性も高いです。
 現状では主として linrunner 氏という匿名の個人のみによって開発されていて開発の継続性や方向性がやや不透明なのが短所といえば短所ですが(cf. xscreensaver),既に6年以上開発が続いており,実績は充分です。
 Debian の場合,TLP はターミナルから以下を実行することで導入され,機能を開始します(詳しくは Arch Linux Wiki を参照)。

$ su
# aptitude update
# aptitude install tlp tlp-rdw
# systemctl enable tlp.service
# systemctl enable tlp-sleep.service
# systemctl disable systemd-rfkill.service
# tlp start

キングジム,折りたたみキーボードのモバイル PC「PORTABOOK XMC10」発表

フルサイズをコンパクトに、たためるパソコン「ポータブック」 | キングジム
【Hothotレビュー】キングジム 「ポータブック XMC10」 ~開閉型キーボード搭載のコンパクトWindows 10ノート – PC Watch
動画:キーボード変形Win10 PC『ポータブック XMC10』開発者ロングインタビュー – Engadget Japanese

 どこもかしこも判で押したような退屈でくだらないモバイル機器ばかりを出しているモバイル不毛の時代ではありますが,まだこの世の中も捨てたものではありませんね。なにしろこの「XMC10」が世に出ることができたのだから。
 XMC10 はスペックこそ近頃はやりの「PC の形をしたタブレット」ですが,そんじょそこらのガラクタとは一線を画しています。見てください,このキーボードを。名機 Thinkpad 701 を彷彿とさせる,ユニークな変形キーボードを搭載しているのです! 個人的にはこの手のギミックの有用性については懐疑的だったりするのですが,ともかくこれを実現させて世に送り出した心意気は素晴らしい。ポインティングデバイスもタッチパッドなんておもちゃじゃありません。Thinkpad Tablet で採用例のある人差し指で操作するタイプの光学式ポインティングデバイスです。でも,せっかくなら Thinkpad のような物理的なトラックポイントにして欲しかったですね。コストや厚さの兼ね合いから妥協もやむを得なかったのでしょうけども。閑話休題,液晶もあの忌々しいグレア液晶ではなく,屋外や日光の差し込む環境でも快適に使える安心のアンチグレア液晶です。このマシンはモバイルマシンであることに加えディスプレイが8インチとかなり小さめですので,ディスプレイが見やすいアンチグレアであることは重要なポイントです。プロジェクタの接続を念頭に置いてでしょう,変換コネクタ不要の VGA 端子も搭載しています。 
 一方で難点や荒削りな部分も目立ちます。まずは何より価格でしょう。Atom,RAM 2GB,eMMC 32GB というスペックで予価「9万円前後」というのは相当厳しいと言わざるを得ないでしょう。もっとも,独特で手の込んだ造り,ニッチ製品で数が出ることは期待できないことを考えると,仕方のないことだとは思います。バッテリ駆動時間が公称5時間というの厳しいです。バッテリ駆動時間は徐々に縮んでいくものであることを考えると,せめて8時間は超えて欲しいところです。また,バッテリが取り外せないのもマイナスです。そして,これはかなりクリティカルな問題ですが,重量が公称で820gと実はあんまり軽くありません。10.1〜13.3インチの普通のモバイルマシンと同じくらいあります。たとえば,予算をあと3万円ほど足せば,性能が遥かに上でバッテリも倍持って重量が85g軽い Let’snote RZ4 が買えてしまいます……
 とはいえ,これはキングジムの初のモバイル PC です。代を重ねるごとにユーザの声を取り入れて進化していった Pomera のように,これからユーザの声に応えて洗練されてゆくことでしょう。正直なところこの機種はそれほど売れないとは思いますが,それにこりず,第二弾・第三弾とユニークなモバイルマシンを投入していって欲しいものです。これからもキングジムのモバイル PC に注目していきたいと思います。

16/11/25追記:発売から一年近く経ったいま,値段は22000円前後まで落ちているようです。一般的なタブレット構成のラップトップより安いですから,これは間違いなく破格です。尤も特殊な仕様ですから「他のを買うならこれを」という勧め方はできません。ともかく,うっかり買ってしまわないよう気をつけたいと思います(?)

202X年 HMD のある暮らし

 けたたましく鳴る目覚まし時計のアラームで目が覚めた。時刻を見ると,8時半。ちょっと寝坊してしまった。ベッドから飛び起きて,急いで身支度を整える。寝ぐせを櫛でねじ伏せて,顔を洗って。財布を忘れず持ったことを確認してから,充電台から「眼鏡」を取って装着した。
 <おはようございます>
 自動で「眼鏡」の電源が入って,控えめな色の文字が視界に浮き出る。これからまた家に帰るまで,自分はこの「眼鏡」越しの景色を見て過ごすことになるわけだ。この「眼鏡」というのは,もちろん単なる眼鏡ではない。最近出てきたちょっと面白い機械で,見た目は普通の眼鏡と何ら変わらないながら,液晶ディスプレイのようにさまざまな情報を表示できるのだ。つまり,現実世界に「眼鏡」の映像が重なる格好になる。これを「拡張現実」と言うそうだ。拡張現実。まったくその通りで,入力も出力も肉体とうまい具合に一体化している。たとえば,「眼鏡」のディスプレイが表示可能な領域は視界のほとんど全体に渡っていて,ヴァーチャルなものを全く違和感なく現実に重ね合わせることができるし,つるに内蔵された骨伝導イヤフォンで音も鳴らすことができる。操作もいかしていて,視界全体がまるでタッチパネルのように指で操作できるほか,簡単な機能は視線ジェスチャで,目を動かすだけでもできる。ほんの数年前まで,ちっちゃいタッチパネルを親指で必死にいじくっていたことを考えると,まったく信じられないほどの進歩だ。
 いや,そんなことを言ってる場合じゃないな。なんとか次のバスに間に合わせないと!

 急いだおかげか,ちゃんとバスに間に合った。そのうえ意外に空いていて,席に座ることもできた。これはありがたい。
<「今日のニュース」>
 一息つくと,「ポーン」という電子音とともに文字が浮き出て,ニュース記事の一覧が空中に現れた。「眼鏡」はなかなか賢くて,GPS や加速度センサなどの情報をもとに,ユーザがいまどこで何をしているかを判断して動いてくれる。この場合は,バスが発進したことを認識して,いつも退屈まぎれに開く「今日のニュース」アプリを自動で表示したわけだ。こういうのを「コンテキスト・アウェアネス」と言うらしい。この流れは最初からプログラムされていたわけでもなければ,自分で設定したわけでもない。ただ,バスが発車したら「今日のニュース」を開く,ということを何度か繰り返しているうちに,機械の方で勝手に覚えてくれたのだ。
 どれどれ…… ん,「松野家,牛丼また値上げ」? こいつはけしからんな。いくら上がるんだろう。気になったニュースがあれば,ただ単に指を伸ばしてその記事のタイトルを押せばいい。もちろん現実世界には何も無いのだけれど,「眼鏡」の視界では30cmくらい離れたところにディスプレイがあるように見えて,そのあたりを指で触るようにすればちゃんと反応してくれる。この仕組みはなかなか不思議だけれど,超音波とサーモグラフィーの組み合わせで実現しているらしい。なんとも便利だが,一つだけ問題がある。傍から見たら不審者以外の何者でもないのだ。「眼鏡」もだいぶ普及してきたので購入当初のように不審者を見る目で見られることも少なくなってきたが,やはりあんまり格好の付くものではない。メーカーも同じ事を思っているのか,近頃は脳波を読み取って操作する仕組みの開発に力を注いでいるとのことだ。実現まであと一歩というところまで来ているらしい。これが使えるようになれば,もう人の目を気にする必要もなくなるだろう。
 ちなみに牛丼は30円値上がりするらしい。貧乏学生にはつらい話だ。

 午後の講義がひとつ休講になった。図書館で本を読んでもいいが,せっかく天気がいいのだから少し散歩でもしよう。ジェスチャーで「眼鏡」のメニューを呼び出し,「ヴァーチャロポリス」を起動した。これはいま世界中で大人気のアプリで,現実世界のあらゆる場所,物に好き勝手にメモを貼ったり 3D モデルを置いたりできる,言わば VR 掲示板だ。20年近く前,日本の会社がこれとよく似た機能を持った携帯電話アプリをリリースしたそうだが,当時のハードウェアの制約からあまりうまく行かず終わってしまったらしい。世に出るのが早すぎたとしか思えないものが,世の中には時々あるものだ。
 新しいもの好きの人が多いキャンパスだからか,あまり人の通らないような裏道であるにもかかわらずやたらめったらと書き込みが多い。「ここで携帯電話を落として壊した。かなしい」お気の毒に。「至急! 誰か“UNIX システム概論”のノート見せて!」授業に出ろ。「ここでツチノコを見た。転がるようにして逃げていった」んなアホな。「この木の名前知ってる人いたら教えて」これは心当たりがあるので返信。「たぶんサルスベリじゃないかな」
 陽にあたって健康的なんだかネット浸りで不健全なんだかよくわからない散歩をしているうちに,次の講義の時間が近づいてきたので,講堂に向かった。

 退屈な授業を終えてバスに乗ったが,今日はまだ家には帰らない。新宿で旧友と少し飲む予定があるのだ。連中と会うのは久々なので,なかなか楽しみなところ。
 <新宿までの乗り換え案内を表示しますか?>
 駅構内に入ると,半透明のウインドウが表示された。スケジュール帳のデータから新宿に行くということを予測し,乗り換え案内を自動で検索してくれたのだ。「はい」ボタンを押すと,何分の電車に乗ればよいのかの案内が表示された……が,電子切符のクレジットが切れていたんだった。まずは入金しなきゃなあ。指先でウインドウをひょいとつまんで脇に移動させて,券売機へと向かった。

 電車はかなり混んでいた。電車に限らず,公共交通機関というのはどうも好きになれない。むやみに人が多くて心が荒んでくる。混んでいなければそうでもないが,いつ乗っても混んでいる気がする。絶望的だ。でも,そんな電車の中を多少はマシにしてくれるものがある。それが「眼鏡」だ。ほら今も,電車が発車したことを認識して,自分好みのラテンジャズをかけてくれている。
<「読書」アプリを起動しますか?>
 こう混んでいては手を動かしてボタンを押すわけにはいかないので,両目をぎゅっとつむる。これが「はい」の意味だ。すぐに画面が切り替わり,読みかけの『日本の宇宙開発史』が表示された。ページ送りは自動で,視線の動きを認識してうまいタイミングで次のページに切り替えてくれる。
 さて,つり革にしがみ付きながらではあるが,しばらく本を読みながら到着を待つことにしましょうか。あいつら,変わってないかなあ。

新発売のレノボ YOGA TABLET 2-851F はなかなかお買い得

 今月28日にレノボから「YOGA TABLET 2-851F(YOGA TABLET 2-8 with Windows)」という機種が国内発売されるようです。名前の通り,「スタンド付き」ギミックで知られる Android タブレット YOGA TABLET シリーズの Windows 8.1 with Bing 版のようです。この機種は8インチ液晶ですが,10インチ液晶を搭載しキーボードがセットになる以外は同様のスペックのモデル「YOGA TABLET 2-1051F」も既に5万円程度で発売されています(この機種のレビューを見ると概ね高評価で,2-851F も期待できそうです)。さてこの機種ですが,価格比較サイトでは発売前から既に最安値が32,000円を割り込んでいるという安さながら,解像度が1920×1200で,MS Office H&B 2013 も搭載しているというお買い得っぷりなのです。もはやおなじみ 32GB しかストレージがないmicroHDMI コネクタも miracast 等への対応もなく 1,内蔵グラフィックをいかした外部出力が不可能という弱点がありますが,タブレットとして使う前提であればそれほど困らないでしょう。それに MS Office くらいであれば USB-VGA でも問題ないはずです。IPS 液晶,公称15時間バッテリ駆動,重量 426g,Wifi は 11n 対応で Bluetooth も 4.0 と,ストレージや外部出力の他には特に弱点は見つかりません。この機種は8インチ Windows タブレットの新定番となることでしょう。

余談:
 DELL Stream 11 と類似したスペック・価格(199.99ドル)の ACER Aspire ES1-111M-C40S 同等とみられる ES1-111M-F12N という機種が先月から国内販売されていたようですが,どのショップも横並びで29,800円という価格になっています。

2015/4/11追記:
コメント欄でいただいた情報によると,Windows 版の本機種も実際には miracast に対応しているとのことです。

Notes:

  1. 14/12/16追記:日本版および米国版の製品ページを確認しても miracast 等について言及されていないことから対応していないと判断しましたが,Android 版のみの前機種でも言及がないものの実際には対応しているようなので,ひょっとしたらこの機種も対応しているかもしれません。少なくとも対応できない/しない理由は思いつきません